男の娘試論(3):白洲正子と『バカとテストと召喚獣』

 前回は河合隼雄の『とりかへばや、男と女』から、ユング派的な視点で『放浪息子』を観ると割とすんなり嚥下できるんじゃない?的なことを書きました。

しかし、それはそれで納得するとしても、一方で「なぜ”今”なのか」ということについては一切答えていないし、答えるツールにはなっていない、という問題が残ります。

端的に言えば、評論家さんや思想家さんたちに「今時ユングかよww 時代に合ってないじゃん、プププww」などと言われても仕方がない、ということですね。
 # 尤も、そうやって突っ込まれても、自分は素人だし、試論だしぃ〜、といって逃げますけどw

「男の娘」が新しい現象であると、それこそ、例えば男の娘雑誌の『わぁい!』の創刊時期などを考えると、ポスト・ゼロ年代的ですらありえることを思えば、それを考えるツールも古いものだけではなく新しいものが必要になるだろうことは理解しています。

・・・ですが、「何が起きているのか、なぜ今なのか」をあれこれ考える前に、もう少し、古典的な作品などから連想されることを書いて、どういう現象なのか、どこに引っかかるのか、を考えたいと思います。

で、今回はBLにしても男の娘にしてもなぜ中性的な男性が出てくるのか、という点につき、前回の『放浪息子』を受けて進めたいと思います。



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『放浪息子』11話では、千葉ちゃんに

「二鳥くんは私にとってずっと特別な男の子だったわ」

「本当に、特別な男の子、だった」


という台詞があるわけですが、これは前回、「男女いずれかを選び取る前の二鳥修一が好きだという千葉さおりの視線の意味と位置付け」というように書きましたけど、千葉ちゃんのこの過去形な台詞とそれに伴う仕草は、私にとっては第二次性徴と共に男性であることを選びつつある二鳥修一を前に、女装した修一でも男の子である修一でもなく、中性的だった修一が好きであり、名残惜しんでいるように映りました。

これは、前回うだうだ書いた、男性原理を選ぶか女性原理を選ぶかという自身の選択の問題ではなく、第三者的視点の問題として捉えられるかと思いますが、『放浪息子』においては、性別に関して曖昧になる場面での第三者的視点での感情表現は、初っ端の更科千鶴の男装が格好いい云々以外では、視聴者がそう感じるように、総じて否定的な感情を以って表現されているように思います。

そんな中で、千葉ちゃんのこの台詞は、男性か女性かをハッキリと選んでいる人物の、中性的な男性に対する肯定的な言葉として、かなり鮮明な印象をもたらしているように思います。

そして、この千葉ちゃんの美意識にはあまり違和感がない、と私なんぞは思ってしまいましたが、どうですかね、一般的かどうかは検討の余地がありそうに思いますが、ともかく、もしこの千葉ちゃんの美意識が説明できるとしたら、という時にストレートな答えをくれたのが、白洲正子『両性具有の美』でした。

白洲正子はこのエッセイ集で、『古事記』『日本書紀』から、『源氏物語』、『賎のをだまき』を経て森鴎外、南方熊楠に至るまで、繰り返し繰り返し、日本の歴史において連綿と続く、成人前の童子の美しさ、衆道文化とそれらの表現について論じていて、これを読んでいると
なんだ、千葉ちゃんの美意識は極めて伝統的なものなんじゃん
という風にすら思えてきます。

そして、成人前の童子の美しさを愛でる価値観が衆道と不可分であるなら、成人前の美少年は容易に男の娘として表現されうる、ということがいえそうにも思います。

つまり、男の娘は日本伝統の価値観からも生まれうる(キリッ って感じですねw



・・・としてみると、男の娘には往々にしていかにも男らしい名前が与えられているのは、第一義的には雄々しい名前と女の子らしさとのギャップを生み出すことの効果を狙っていることは間違いないと思われるものの、さらに踏み込んで白洲正子によって説明された「成人前の少年の美しさ」を際立たせるツールともなっている、ともいえそうに思っています。

とすれば、中学・高校を舞台とすることがよくあるライトノベルや漫画にあっては、成人前の美男子を登場させやすいし、したがって男の娘を登場させやすい、ということになります。

そして、その伝統的な美意識が脈づいているとすれば、そうした中から、『バカとテストと召喚獣』の木下秀吉が男の娘として最大規模の知名度と人気を誇るのもある意味当然の現象であり、『僕は友達が少ない』の楠幸村(とりあえず)などに模倣されるのも、これまたある意味当然であるように思えるのでした。


ということでまだまだ続きます。
白洲正子の『両性具有の美』は書名でちょい引きますが、面白いのでご一読をオススメしてみます。





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